前回の記事では、業務課にかかる部分のISO9001構築について述べました。日々の業務を明文化し、それをまとめる作業は困難でしたが、なんとか形にすることができたのです。
このように書類上では完成したISO9001ですが、残念なことに業務課でのミスは簡単に無くなることはありませんでした。
弊社ではミスが発生した場合は、ミスをした者が「不具合連絡票」を提出する決まりになっています。この連絡票を作成する目的は、ミスを全員で共有することと改善点を考えることです。私自身が業務課で仕事をしていた時にも、実にさまざまなミスを起こしました。
以下に少しだけですが、業務課での具体的なミスの事例を記載します。
<事例1. 素材及び商品間違い>
1.鉄10Kのフランジを出荷しなければならないのに、ステンレスのフランジを出荷。
2.SGP黒のパイプニップル50Aを出荷しなければならないのに、鉄黒ソケットを出荷。
3.5Kアングル弁を出荷しなければならないのに、玉形弁を出荷。
◆ミスの原因
作業票に記載されている棚番を無視して、個人の経験や勘に基づいて出荷したことが原因。
★改善策
出荷の手順として、一番はじめに必ず作業票の棚番を確認すること。
<事例2. 商品渡し忘れ>
午後(13:30)に引取りに来られたお客様への一部商品の渡し忘れ。
◆ミスの原因
1.メーカーからの商品入荷が昼休みの直前であったことから、検品及び作業票との引当てをしないまま昼休みを取ってしまったことが原因。
2.同一のお客様の複数の作業票の「済み分」と「未作業分」を分離してしまったことも原因。
★改善策
1.午前中に入荷した商品については、量の多少にかかわらず、必ず昼休み前に引当てを行う。
2.どのような理由があっても、原則として同一のお客様の作業票は一括してクリップ留めにして管理する。
このように「改善策」を考えるというのが、ISO9001の運用でとても大切になります。
ミスをした個人を責めるのは簡単です。「もっと注意深くやりなさい」や「気合いを入れて仕事をしなさい」などの指摘は、一見もっともらしく聞こえるのですが、ミスの原因をすべて個人に収斂(しゅうれん)してしまうと全体像が見えなくなってしまいます。
もちろん個人のケアレスミスもあるのですが、一見するとケアレスミスにしか思えないミスであっても、ミスが起きる背景には何らかの原因があると考えた方が良いのです。
その原因を特定し、日々の業務への取り組みを改善していくことこそが、正しいISO9001との向き合い方なのです。
業務課では、時間毎の注意点を記載した「作業チェックシート」を作成し、事務所の壁に貼り付けることにしました。このシートは、チェックした者がサインするので、毎日貼り変えて使用しています。
また、チェックシートとは別に9項目の「作業上の注意事項」を作成し、こちらも事務所の壁に掲示しています。これはISOの申請書類の中では触れることができなかった「極めて具体的な注意事項」を掲載したものです。
最後になりますが、ISO9001の成否のカギは「全員参加」の一言に尽きます。
会社として組織としてどれだけ素晴らしい仕組みを構築したとしても、一人でもその仕組みを守らないスタッフがいればISOは機能しません。
基本に忠実な仕事をしたうえで、現状に満足することなく改善を重ねていく、そういうセンスを社員全員が持つことではじめて、お客様に安定した商品提供ができるようになるのだと思います。
(山地 正晋)